(紹介文引用)
まず、本書が発行されたのが1995年という事ですが、今から29年前の20代前半の学生達が、親のプレッシャーや煩わしい人間関係から逃れるために、こんなに簡単に失踪していたと言う事に、唖然としました。もちろん、フィクションの所もあるとは思いましたが。失踪する若者が、親や関係者からの追跡を逃れるために、仲介者を通じてあれを交換するという発想にもビックリしました。この辺り、貫井さんが、社会派と呼ばれる所なのかなと思いました。
構成はとても良く、すいすい読ませていただきました。ただ結構、登場人物が多かったので、名前を覚えるのが少し大変でした。
この作品のメンバーである元捜一の刑事だった、探偵の原田のストーリーが、ヒューマンドラマで、心に残りました。原田の娘さんの真梨子ちゃんが、原田が警察官を辞めたのにショックを受けていることは理解できるが、そこまで自暴自棄になって非行の道に突っ走って行くのは、高校生にしては、余りに幼い行動だなと思いました。原田が、辞職の時にもう少し、しっかり時間をとって話し合い、真梨子ちゃんと向き合えてたら違ったのかも知れませんが。それでも、最後は、真梨子ちゃんが死の淵から生還し、家族の絆を家族全員で取り戻そうという前向きな終わり方に安堵しました。
私は、昔にハードボイルド作品を読んでましたので、暴力的シーンには、耐性がありましたが、初めてこの手の作品を読む人には、ちょっと暴力的シーンが、残忍すぎるところは少し頂けないんじゃないかと思いました。
最後に、失踪者が、チャラスを作る技術を持ち帰ってたというオチは以外で面白かったです。でも、少し振り返ってみると、色々な伏線がちゃんと回収されていた所に、貫井さんのミステリ作家の美味さが光ってたような気がします。
私としては、最後は、現代版必殺仕事人でも良かったとも思いましたが、そこは、違いましたね。
なかなか渇いた感じのハードボイルドとサスペンスの見事な融合でした。
最後に、貫井徳郎さんの『症候群シリーズ』を紹介して下さったブログ友達のべるさんに感謝しています。