幸せ読書

読書を通して、小さな幸せ見つけたい。

「地雷グリコ」 青崎有吾 角川書店単行本

ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!
射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。 平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。
(紹介文引用)
 

いや〜面白かった〜〜。凄い本が出版された物だなぁ。各方面で高い評価を得てて、凄い面白そうと、目をつけていたのですが、ここ数週間、また体調を崩してまして、なかなか読むことが叶いませんでした。そうして、なんとか読んだのですが、期待に違わぬ素晴らしい作品でした。それでは、本作品の感想をば。

1話目の「地雷グリコ」を読み出してみて、懐かしいなぁ。昭和世代にはたまらんなぁと思いました。ただ、私の育った大阪のある場所では、ゲームの最初に「グー、リー、コ!」とは、言わなかったなぁ〜。「ジャンケン、グー」、「ジャンケン、チョキ」、「ジャンケン、パー」って言って、勝った方が、「グリコ」、「チヨコレイト」、「パイナツプル」と言いながら、進んでたなぁ〜と覚えてます。小さな事なので、全然問題にはならないのですが、地方によったり、年代によって同じゲームも少しずつ違うのかなぁと感慨に耽ってました。

『《地雷グリコ》は読み合いのゲーム。行動や発言から互いに情報を集め、地雷の場所を察知した者、ジャンケンの手を操作した者が勝つ。』とありますが、どれだけ先を読めばいいのだろうか?また、読み方にも角度があるんだと本当に感心しました。

2話目の「坊主衰弱」は、百人一首の絵札を使ってトランプの神経衰弱をやるようなゲーム。このゲーム、主人公の射守矢真兎が、事情あってかるたカフェのオーナーとやることになるのですが、なんとこのオーナーがイ◯サ◯師。なんだーそりゃーって思ってたら、主人公もこのオーナーを見事にやり込めてくれて、スカッとしました。目には目を。ハムラビ法典ですなぁ〜。

3話目の自由律ジャンケンは、いわゆる普通のジャンケン以外に〈独自手〉の存在することで、習慣づいたグー・チョキ・パーに、異物である〈独自手〉二種がまざるこのジャンケンかなり複雑で、高度な情報戦でした。

物事を意のままに運ぶ──プレイヤーではなく、プロモーター側の才能。  ゲームとはまた別の次元で、このゲームの対戦相手の佐分利会長は真兎に勝っていた。こう言う二段落ちみたいな設定凄く好きだなぁと思いました。


4話目の「だるまさんがかぞえた」の第3セットで、主人公の真兎の取る戦略が、推理?推測できました〜〜!!(←相当、嬉しがっております)
1番気になってたのが、この出てくる公園の地形の話が何度か出て来たところで、そういう可能性もあるなぁと思いました。後は、真兎がつけた、追加条件を合わせて行って考えました。まさか、推理が当る?出来る?とは思って無かったので嬉しかったです♪^^

5話目の「四部屋ポーカー」は、通常のポーカーのような運とブラフ(はったり、虚勢)の勝負、ではなく、論理と洞察力の勝負でした。 

通常のポーカーでは、プレイヤーの頭脳が〈交換〉に干渉できる要素はほとんどありません。出現率などの頼りない統計にすがり、少しでもいいカードが舞い込むよう、神に祈ることしかできません。その、カード交換を自由に行えるのだという。

この《四部屋ポーカー》の考案者で、審判でもある塗辺くんの口ぶりは、このゲームにおけるイカサマの許容を暗に示しているとは、全くもって分からなかったです。四つの部室に残されている様々な備品。何を使い、何を組み合わせ、何を行うか。《四部屋ポーカー》は裏工作をぶつけ合う発想の勝負でもあるとは、複雑で難し過ぎて、私の頭の遥か彼方にある物のように感じました。最終戦では、そこまでやるか?!っとツッコミを入れたくなる箇所も、ままありましたが、本作品がエンタメと考えると、ありありで、最高に楽しめる作品だなぁと感じました。

この主人公が強いのは、ただ頭が良いのではなく、常に、人の性質を見抜いて勝つ所にあるなと思いました。ゲームを始める前の相手を洞察する段階で、ゲームの勝ち負けは、半分以上決まっているのだなぁと、思いました。

それにしても、本作家の青崎さん、よくぞこれだけ、面白いゲームを考えられたなぁと、ただただ尊敬の念抱かずにはおれません。また、続編が出版されたら、是非読んでみたいです。大変、面白いエンタメ小説に出会えて幸せでした。

「medium 霊媒探偵城塚翡翠」 相沢沙呼 講談社文庫

死者が視える霊媒・城塚翡翠と、推理作家・香月史郎。心霊と論理を組み合わせ真実を導き出す二人は、世間を騒がす連続死体遺棄事件に立ち向かう。証拠を残さない連続殺人鬼に辿り着けるのはもはや翡翠の持つ超常の力だけ。だがその魔手は彼女へと迫り――。ミステリランキング5冠、最驚かつ最叫の傑作!
(紹介文引用)
 

当ブログに来てくださる皆さま、ご無沙汰しております。3月から体調を崩して、春休みを頂いておりました。しばらく、ゆっくり休養出来ましたので、ようやく体調が少し上向いて来ました。そこで、まだ体調を見ながらではありますが、当ブログを少しずつ再開して行きたいなと思っております。元々、不定期更新のブログですが、また少し更新のペースがゆっくりになるかも知れませんが、どうか、温かい目で見守って頂けましたら幸いです。それでは、今後ともどうかよろしくお願いしますm(__)m


さて、久しぶりに読書しました。大変、傑作にめぐりあいましたが、久しぶりの感想文は、ショボショボです^^;


本作、構成も良いし、話のテンポも良いなぁとまず初めに感じました。

ただ、2話目の『水鏡荘の殺人』の鏡と3人の容疑者とのロジックがなんか、ややこしくてよく分かりませんでした。(←単に自分がアホなだけかも(>_<))

そうこうして、3話目の『女子高生連続絞殺事件』を読み進めていて、まぁお嬢様霊媒師と推理小説家のバディものとしては、こんなものなのかなぁと思ってました。ミステリとしては、ボチボチなのかなぁと。ただ、お嬢様霊媒師・城塚翡翠のことをあまりに、萌え萌えっぽく描くなあと、それと、推理小説家・香月史郎も城塚翡翠の事を好きなのは分かるけど、これ、恋愛小説じゃないよねー?と思ってました。

そうしたら、最終話、「えーー!!嘘ー〜!?そうだったの?」と思わず声が出てしまいました。私、完全に騙されました。(脱帽)とんでもない、どんでん返しが待ってました。う〜ん、凄い伏線回収。
いや〜ここまで、まんまと騙されると、気持ち良かったです。

これ以上書くと、どうしてもネタバレになってしまうので、もうちょっと中身について触れたい思いもありますが、ここまでにしたいと思います。

最後に、この作品、続編があるみたいで、本作が非常に面白かったので、興味があるのですが、流石に本作と並ぶ面白さは、期待出来ないのかなぁって。本作と並ぶ作品を続編で書けたら天才なんじゃないかなと思ってます。

春休みを頂きます。

先週ぐらいから、体調を崩しております。季節の変わり目が主な原因だと思います。妻が放射線治療を行なっているので、私も気が張っているのも1つの要因かも知れません。体調が悪いので、読書したいのですが、少し無理なようです。ですので、ブログ更新をしばらく、お休みさせて頂こうと思います。

 

いつも仲良くして下さってる、ブログ友達のべるさん、わぐまさん、ムっくんさん、その他いつもスターを下さったり、当ブログを応援してくださる皆様、ご心配をおかけしまして申し訳ありませんが、何卒よろしくお願いしますm(__)m

 

春が終わる頃には、またブログに戻って来れたらなぁと思っています。

皆さま、それまで、どうかお元気で。

「春季限定いちごタルト事件」 米澤 穂信 創元推理文庫

そしていつか摑むんだ、あの小市民の星を。
小市民を目指す小鳩君と小山内さんのコミカル探偵物語
小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに2人の前には頻繁に奇妙な謎が現れる。消えたポシェット、意図不明の2枚の絵、おいしいココアの謎、テスト中に割れたガラス瓶。名探偵面をして目立ちたくないというのに、気がつけば謎を解く必要に迫られてしまう小鳩くんは果たして小市民の星を掴み取ることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語
(紹介文引用)
 

タイトルの様に本作には、クレープ、いちごタルト、ココア、ひいてはケーキバイキングなどスイーツがたくさん出て来たのは、甘辛両刀使の私にとっては、楽しかったです。

第1話の『羊の着ぐるみ』に出て来たポシェットに入ってたのもは、この年頃なら容易に想像出来ますよね〜。でも、そういう無骨なやり方しか思いつかなかた高田君がまた、初々しく感じました。小鳩君を助けた小山内さんのコンビネーションが良かった。

第2話の『For your eyes only 』に出て来た「価値概念と数量概念がごちゃごちゃになってる高尚って言葉に、シニカルな目を向けてたんだ」という意味がイマイチ良く分からなかった。(私がアホなだけか?)

第3話の『美味しいココアの作り方』では、小鳩君の同級生(幼馴染)の健吾こだわりのココアの作り方もへぇーと思いましたが、それよりも、小鳩君の性格的なことについて、健吾に「三つ子の魂ってやつだ。」と言われて言い返したのが「男子三日会わざれば、ってやつだよ。」え!それ何?と思いました。そこで、調べてみると、「男子、三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ」という慣用句だそうです。意味は、「人は別れて三日もすれば大いに成長しているものであって、また次に会った時は目をこすってしっかり見なければなりませんよ。」とのこと。
本作、文章は、本当にライトなのですが、ちょいちょい難しい言葉や聞いたことのない言い回しが出て来るので、米澤先生、学がお有りなんだなぁと思いましたし、私自身、大変勉強になりました。

ただ、このお話のテーマと言うか、キャラ設定の『小市民』である事の何が良いのかが最後までよく分かりませんでした。あと、小鳩君と小佐内さんの互恵関係というのも、いまいちピンと来ませんでした。それと、私は、やっぱり日常のミステリ(人の死なないミステリ)よりも、人の死ぬミステリの方が好きなんだなぁと改めて思いました。本作を薦めて下さったべるさんには、申し訳ない感想になってしまいましたm(__)m

最後に、結局、お一人様一個限定の春季限定いちごタルトの行方はどうなったのかなぁ〜。やっぱり、あのサカガミが1人で2個食べたのかなぁ〜。

「居酒屋ぼったくり」 秋川滝美 アルファポリス

東京下町にひっそりとある、居酒屋「ぼったくり」。名に似合わずお得なその店には、旨い酒と美味しい料理、そして今時珍しい義理人情がある――。全国の銘酒情報、簡単なつまみの作り方も満載! 旨いものと人々のふれあいを描いた短編連作小説、待望の書籍化!
(紹介文引用)
 
本作品、ブログ友達のべるさんに、お酒好きの私なら良いのではとお薦めしていただきました。これが、食いしん坊でお酒好きな私のドストライク(死語か?)でした!べるさん、ありがとうございます!今回の記事は、色々内容について触れたいので、ネタバレ&ただ書きたい事を書くで行きます。本作を読もうかなぁと思ってらっしゃる未読の方は、ご注意下さい。ネタバレじゃない記事を読みたい方は、以下のべるさんの素晴らしい記事を読まれる事をお薦めします。
 

belarbre820.hatenablog.com

 

この居酒屋ぼったくりは、席数からしてちょうど良い。カウンターと小上がりで合わせて20席とのこと。その店で今調理したものを出せる手作り料理の限界は、大体30席未満だと、過去の経験上思うからです。居酒屋や料理屋をネットで探す時は、席数も決める重要な要素にしてます。

第一話『暖簾の向こう側』に出て来た「おでん」いいですね。私も、毎年、具材をたくさん買って、妻と一緒に作ります。私のおでんの鉄板は、大根、玉子、厚揚げです。皆さんは、何がお好きですか?さて、去年の11月頃に、今シーズンの1回目のおでんパーティーをしました。でも今シーズンは、妻の入院と手術があったので家で作るおでんは1回きりでした。それで、妻の手術の日、相当精神的にも、身体的(胃への)にもストレスがあったようで、なんかあっさりしてて、温かい物が食べたいなと思い、好きな居酒屋さんのおでんをデリバリーで注文して食べました。温かくて胃にも優しくてとても嬉しかった記憶があります。本作、居酒屋ぼったくりのおでんは、ちくわぶが入る所を見ると、関東のおでんだなぁと思いました。

そして、おでんの話しの後に出て来た美音さんの作る卵黄の味噌漬け、お酒に合いそう。食べた事がないので、食べてみたーい。

それから、常連さんの1人のアキさんが所望した人参の葉っぱ。大根の葉っぱの炒めた物なら食べたことがありますが、人参の葉っぱの炒めた物は、今まで食べたことありません。話に出てくるアキさんとリョウ君の食べっぷりを見てると美味しそうだなぁと思いました。(人参は苦手だけど^^;)

次に、第3話に出て来た『小鰺のあつあつ南蛮漬け』。 熱いのに冷たい。冷たいのに熱い。カリカリに揚がった小鰺が冷たい三杯酢を含んで、噛んだ瞬間じわりと染み出すってのを読んで、不覚にも食後にも関わらずヨダレが出ました。('﹃'*)ジュルリ

第3話の『丑の日の孝行娘』は、良い話だったなぁ。人間の温かさと愛情が滲み出て来る話でした。その話の「鰻問題」を解決するのに、脇役として登場したのが錦糸玉子。作中に「大人でも下手な人がいるぐらいの錦糸玉子」とありましたが、私も錦糸玉子を作るのが苦手です。私が結婚する前、付き合っていた妻の方が残業が多く、帰りが遅かったので、3月3日のひな祭りの日に、帰りが遅くなる妻にちらし寿司を作っておこうと、試みたのですが、錦糸玉子が上手く焼けず、分厚かったり薄くて、切れたりと散々でした。それでも、妻は喜んで食べてくれたのを今でも覚えています(苦笑)

第6話『夏休みの過ごし方』に出てきた、枝豆には、ビックリ!「うちでは、枝豆は枝に付いたまま大鍋で茹でちゃうの」とのこと。人生半世紀生きてきたけど、枝に付いたまま茹でた枝豆なんて、一度も食べたことがありません。それは、それは、美味しいだろうなぁと思いました。

最終話『ゴーヤの苦み』にゴーヤチャンプルが登場するのですが、そのレシピが、「しっかりわたを取ること、塩もみすること、湯通しすること、それにノリの言った『ポーク』と鰹だし。」これって、私が昔、ネットで調べた沖縄の人が書いてらしたレシピと一緒だ!と思いました。ちなみに、我が家は、ポーク(スパム)の代わりに豚肉でやってます。

本作、途中でたまに出て来る挿し絵が温かいタッチで心癒されました。


特別高い仕入れ品ではなくても、料理の作り方一つ一つに細かい配慮が詰まっている所が、この居酒屋ぼったくりの凄い所だと思いました。そして、そこに集う人達の人情にとても心温まりました。この作品、また必ず続編読みます!

最後に、本作に登場した、数々の美味しそうなお酒なのですが、全部飲んでみたーいと思いました(飲んだことあるのは、日本酒1種類だけだったのて、凄く、勉強になり、貴重な情報でした!)

それで、実際に飲んでみようと思って、まずは、近くのスーパー(結構、お酒の種類に力を入れてるスーパー)で買えて美味しそうな2つにしました。両方とも本作で、「閉店前に来る男」こと要さんが飲んでたお酒です。

<日本酒代表>

厳選辛口 吉野川

<ビール代表>

ヒューガルデンホワイト

また、実際に飲みましたら、サブコーナーの記事にアップするかも知れません。

今回は、書きたい事を書きたいだけ書いた、はちゃめちゃ記事にお付き合いして頂きまして、ありがとうございました。これに懲りず、今後とも当ブログをご贔屓に、よろしくお願いします。

「殺人症候群」 貫井徳郎 双葉文庫

警視庁・人事二課、環敬吾が率いる特殊任務チームは、一見何の関係もない複数の殺人事件に関連性がないか捜査を開始する。「大切な人を殺された者が、犯人に復讐することは是か非か」という社会的テーマとエンターテインメントを融合させた読み応え抜群の徹夜本。サスペンス、社会派、ハードボイルド、そして本格ミステリー。あらゆる醍醐味を味わえる、シリーズ三部作の掉尾を飾るにふさわしき大作にして傑作! 装い新たに新登場!
(紹介文引用)
 

今回の感想は、本作品のテーマに絞って書いて行きたいと思います。

上の紹介文では、「大切な人を殺された者が、犯人に復讐することは是か非か」が本作品のテーマと書いてありますが、本作を一読した私としましては「職業殺人者(殺人請負人)は、是か非か」の方がより本作のテーマに近しいと感じています。

話の途中で、職業殺人者の仲間は言います。「私達は生きてるに値しない人間しか殺していない。私達がしていることは正義なのだと。」
だが、生きているに値するかしないかは、誰が決めれる事なのでしょうか?法治国家の名の下での司法制度の少年犯罪や精神疾患者に対する機能は不全に陥っていると言っても過言ではないかも知れません。そうするならば人間か?神か?誰が決めれるのでしょうか!?

一方で、敵討ちと職業殺人は全然別個のものだと私は考えます。明治6年の「復讐禁止令」の公布までは、武士階級では、敵討ちは認められていました。少々ラディカルに思われるかもしれませんが、私は、敵討ちは認められても良いと思います。しかし、他人の敵討ちをお金で請け負い、それが正義だと言うのは、欺瞞であり、エゴであると思います。

そう言う観点から申し上げれば、私は復讐は是だが、職業殺人は非だと言う考えになると思います。これが、本作をずっと真正面から真剣に考えてたどり着いた私のテーマに対する答えです。こういう事を明言すると、復讐は復讐の連鎖を招くとか、法治国家での社会的秩序が守られないと、ご批判を受ける事も重々承知しております。でも、私は、人間は、理屈や法律だけでは、割り切れない感情の生き物だと思っています。私は、もし妻が何者かに殺されたら、絶対にその人間を生かしてはおきません。

それにしても、重く、悲しい場面の多いお話でした。

最後に、歌舞伎町で見えたような後ろ姿がもし倉持だったなら、著者のテーマへの答えがそこにあったような気がしました。

 

「誘拐症候群」 貫井徳郎 双葉文庫

誘拐事件が連続して起きていた。しかし子供の家族がなんとか払える身代金を要求するため、表沙汰にはなっていない。今、警視庁人事二課・環敬吾は影の特殊工作チームに招集をかける。だがその時、メンバーの一人で托鉢僧の武藤隆は、知り合いの子供が誘拐された事件に巻き込まれていた――闇に潜む卑劣な犯人を必ず炙り出す! ページを捲る手がとまらない、大人気「症候群シリーズ」新装版・三月連続刊行、第二弾!
(紹介文引用)

警視庁の影の特殊工作チームの環が追う、小口誘拐事件と、環のチームのメンバーである托鉢僧の武藤が巻き込まれる大口誘拐事件が巧みに交互に重なって来る展開は、読者の興味を飽きさせない作者の素晴らしい構成力だなぁと感心しました。

作品の途中、武藤が掴んでいる情報をただ警察に伝えるのではなく、自分自身で犯人確保にたどり着きたいという男として、いや人間としての意地が文面からひしひしと伝わって来ました。こう言う人間臭い所も面白かったです。

少しずつ犯人に近づいていく所の描写がとても上手で緊迫感があり、手に汗握る展開でした。

また、終盤に分かる、犯人起訴後に明らかにされる真実にも驚かされました。

でも、その結末より私が共感したと申しますか、思い出したと言った方が適切なのかも知れませんが、武藤が巻き込まれた事件の被害者である高梨のことを武藤が何故気にかけていたのか悟ったといいます。「高梨もまた、胸の奥に《獣》を飼っていたのだ。武藤が嫌悪し、目を背けてきた醜い《獣》を」と。この内に秘めた《獣》こそが、数々のハードボイルド作品を世に送り出して来た北方謙三の作品のテーマだったからです。北方謙三作品の『牙』や『檻』、そして名著『挑戦シリーズ』に続くテーマであったと思いますし、今、本作を読んで改めて思い出しました。

20代のころ私が夢中になって貪るように読んだ北方謙三などのハードボイルド作品を本作の作家の貫井さんは多分全て読んでらっしゃるんだろうなぁと思いました。

そのハードボイルドテイストと社会派ミステリ小説を見事に融合した本作は、素晴らしい作品でした。本作、『失踪症候群』に勝るとも劣らない名作だと思いました。