幸せ読書

読書を通して、小さな幸せ見つけたい。

「巷説百物語」 京極夏彦 角川文庫

怪異譚を蒐集するため諸国を巡る戯作者志望の青年・山岡百介は、雨宿りに寄った越後の山小屋で不思議な者たちと出会う。御行姿の男、垢抜けた女、初老の商人、そして、なにやら顔色の悪い僧――。長雨の一夜を、江戸で流行りの百物語で明かすことになったのだが……。闇に葬られる事件の決着を金で請け負う御行一味。その裏世界に、百介は足を踏み入れてゆく。世の理と、人の情がやるせない、妖怪時代小説、第一弾!
(紹介文引用)
 

これは、掘り出し物だったぁ〜!!!
いやぁ〜面白かった!!

この『巷説百物語』シリーズは、以前から知っていたのですが、何故、今まで手を出さなかったんだろう。それは、一重に、自分があまり時代物は、得意じゃないからという思い込み、または、食わず嫌いからだと思います。人生を振り返っても、歴史小説って、吉川英治の『三国志』しか読んだことが無かったもので^^;

この『巷説百物語』は、7つの短編作品からなる連作短編集で、いずれの短編も素晴らしくて、甲乙付け難いです。五作品目の『塩の長司』も、大掛かりな仕掛けで、どんでん返しに次ぐどんでん返しで、まるで中長編物の面白さがありましたが、私としては、やはり一作品目の『小豆洗い』の非常にコンパクトでスピード感もあり、理詰めで悪人を追い込む所が1番好きですね。この一作目のインパクトが大きくて、一気に巷説百物語の世界観に入っていけたのだなぁと思います。

また、本シリーズは、京極堂シリーズとは反対の、妖怪を憑き物落としで落として解決するのではなく、妖怪に見立てて?妖怪に絡めて解決して行くところが異なって、またそこが、大変よく出来た作品でした。構成の妙と話の進め方の巧みさで、読者に一気に読ませ切らせる筆致は、流石は京極夏彦だなぁと思いました。

登場人物も、小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平、そして─考物の百介と非常に個性豊かで、一癖も二癖もあるキャラクターがとても良かったです。特に、又市とおぎんが、江戸っ子言葉で、捲し立てるところが粋でカッコ良かったです。

また、いつもの蛇足ではありますが、
『芝右衛門狸』の話の中に「それからあれは大坂の、二八饂飩屋の亭主であったか。あの夜は、糸屋の丁稚小僧であったよな。ざくりと斬ったな。顔を割ったな。血がだくだくと出たな。啜りたかったであろう。ほら思い出せ──」という一説が出てきました。大阪人の私としては、いくら大阪は、蕎麦よりうどんが有名でも、二八うどんと言うのは、聞いたことが無い。京極先生、二八蕎麦と間違えたんじゃないのかなぁと思って調べてみたら、次のようにありました。

日本国語大辞典』には、「二八そば」では両説が併記してあり、「二八うどん」には「江戸中期以降の1枚16文のすうどん」とあります。

そうなのかぁ〜〜。江戸中期には、二八うどんって本当にあったんだ!流石は京極先生、おみそれいたしました。

「御行奉為──」
  
 りん。