
(紹介文引用)
青山美智子さんの作品は、本作で四作品目です。『うずまき』、『木曜日』、『お探し物』と読んで来ました。本作品も、前三作同様、青山さんの人に対する優しい愛情がたっぷりでほっこり出来る作品です。ただ、本作品は、少し上級者向きな所がある様に思いました。それは、何かに悩んでいる人が、たまたま神社にやってきて、そこに、まるで神様の使いのような、ハチワレの猫のミクジが現れて、タラヨウという樹の葉っぱを一枚授けてくれます。そこには、「マンナカ」とか「タネマキ」とか、一目見てもなんのことだか分からないお告げが書かれています。そのお告げの意味を主人公は、探そうとするのですが、中々、分からずに悩みます。そして、中には、分からなくて、もう一度神社に(ミクジに)助けを求めてやって来る主人公もいました。その時の神社の宮司さんが、「 何かの答えを見出すのは素晴らしいことです。でも、そこにたどりつくまで迷いながら歩く日々のほうこそを人生と呼ぶんじゃないかと、わたしは思うんですけれどね」と仰りました。思い悩む過程の方が大切だとおっしゃって、中々、すんなり解答を教えてもらえません。実際、現実では、すぐに答えの分からないことが沢山あると思いますが、そこを生き抜いて自分で未来を切り開くことを身につけることの重要性を、青山美智子さんは、本作品で説いていらっしゃるのかなぁと思いました。そういう意味で、ちょっと上級者向けなのかなとも思いました。
そして、全七作の連作短編集の、五作品めを読み終わった時、
「自分にとっての〜『お告げ』〜」というのがキーワードの様な、本作品のテーマの様な気がしました。例えば、ただ『マンナカ』って何だろう?ではなく、「自分にとっての『マンナカ』」とは、なんだろうと考えた時に初めて、お告げの真の意味がわかって、自分の人生を自分自身で切り開いて、新しい世界が見える様になのではないかと思いました。そういう意味で、本作品は、ただ私をほっこりさせてくれただけでなく、ちょっと大袈裟ですが、自分の人生とは?と考えさせて下さった素晴らしい作品でした。
最後に、青山美智子さんの作品を読むたびに、いつも思うのですが、本の構成、また、本と本の構成が素晴らしいなと感じました。本作品の構成としてユニークだったのが、最終章が「ここだけの話」として、短編集に登場した主人公全員の後日談が描かれていたことです。色々な悩みを抱えていた人達が、自分で踏み出して、一歩先を歩き出している様子が知れて、とても幸せな気分になれました。また、私が、本と本の構成と申しましたのは、本作品には、『お探し物は図書室まで』の司書さんだった小町さんが、司書の前職である養護学級の先生をされていた時の話が登場して嬉しく思いました。また、『木曜日にはココアを』で登場したトリックアートの芸術家兼、主夫の輝也パパの再登場も、なんか、私の知ってる人が出てきた〜と単純に嬉しくなりました。青山美智子さんという作家さんは、本当に人と人の繋がりを大切にされ、またその繋がりを書くことに秀でた方だなぁと感心してしまいます。
こんな素晴らしい作品に出会えて幸せでした。
追伸 : 本作に欠かせない猫のミクジですが、登場人物の人が、ミクジに会ってなんか笑ったような気がした。でも、猫が笑うか?!みたいな発言が、ありましたが、私の飼っていた茶トラのネコはよく笑いました。なので、猫が笑うのは不思議な事ではないと思います。ネコ愛が強くてすいません(苦笑)